様々なコミュニケーション戦略をわかりやすくまとめている本があったので紹介します。
企業からお客さんに一方的に情報を伝えていた広告戦略から、お店だけでなくウェブやイベントなどあらゆる接点をお客さんと持ち、双方向に情報をやり取りするコミュニケーション戦略が主流になっている時代。
この本では、そのコミュニケーション戦略のベースになる理論が7つあって、それぞれの考え方が生まれた時代背景や事例、強み・弱みをまとめています。その理論は、
- ポジショニング論
- ブランド論
- アカウントプランニング論
- ダイレクト論
- IMC(Integrated Marketing Communications)論
- エンゲージメント論
- クチコミ論
ポジショニングやブランド戦略などはすでにマーケティングを学んでいる人は読み飛ばしても大丈夫(だと思う)ですし、アカウントプランニングやIMCも言葉にピンと来なくても、内容自体はすでにあちこちで語られている手法なので、知らない箇所があればきっちりそこを読み込めば良いと思います。
私が良いと思ったのは後半の「エンゲージメント論」「クチコミ論」です。この2つはSNS時代のいま、企業の規模に関係なく無視できないコミュニケーション手法。SNS自体の使い方や運営、広告出稿の方法など実務的な書籍や情報はネットにもあふれていますが、きちんと全体を分析して要点をまとめているものはまだ少ないと思います。
エンゲージメントの定義については引用すると
「エンゲージメントとは、お客さんが能動的に関与することで生まれる、心理的なつながりである」というのが一番正しいでしょう。
ポイントは能動的な「関与」。例えばウェブ動画を再生する、リツイートするなど、ささいな形であっても、なんらかの能動的なアクションを伴った絆や関係性です。また、関係を結ぶ対象がユーザーであるか否かは問わないというのが、ヘビーユーザーを対象としたブランドロイヤルティとの違い。・・・・・・
著者は情報過多のこの時代に必須のアプローチとしています。私もこの手法は、地方の小さな会社やお店もSNSやイベントなどを組み合わせて取り組んで欲しいと思っていますが、関与を引き出そうとするエンゲージメントは、時間が掛かり、効果がすぐ出にくいものです。お客さん(お客さんになるかもしれない人たち)と友達のような関係をつくっていくこと―その具体的な方法やアイデアを提案することが、私の仕事のなかでも重要になってきています。
本に戻ると、最後は7つの戦略を俯瞰して、これからのコミュニケーション戦略をどう進化させていくべきか、マーケター/プランナーはどう考えるべきかを述べています。興味のある方はぜひ読んでみてください。
それから、この本にもちょこちょこ紹介されていましたが、SNS時代のファンづくりについては、『明日のプランニング 伝わらない時代の「伝わる」方法』 佐藤 尚之 著 がおすすめ。企業だけでなく、地域の活動をする方にも参考になりそうな、こちらもわかりやすい内容です。新書ですので気軽に読めます。
いろんなコミュニケーションの手法が登場しますが、どんなに時代が変わっても「人が主役」に変わりはありません。お客さんの行動や心理、気持ちを深く考えることを忘れなければ、間違った方向にはいかないのではないでしょうか。情報があり過ぎてどの方法を選んだらよいのかわからない・・・成功事例のノウハウや最新のテクノロジー、トレンドばかりにキャッチアップして徒労になる前に、お客さま(伝えたい相手)のことをじっと考えることから始めるのがコミュニケーション戦略の基本だと思います。