【おすすめ本】おもてなし幻想 デジタル時代の顧客満足と収益の関係

お客さんに期待以上のサービスをして顧客満足が高まれば、リピーターやファンが増え収益が上がっていく、という定説(?)を信じている人も多いと思います。私もとくに高額な商品・サービスについては顧客満足はとても大事な要素だと思っています。

でも、この「おもてなし幻想」では、9万7千人(アメリカ)の顧客への調査結果を元に、この定説を覆すデータを示しています。

サービスチャネルで顧客を喜ばせることは割に合わない。期待を上回るサービスをされた顧客のロイヤリティは、期待が満たされただけの顧客のそれよりほんのわずか高い程度。
カスタマーサービスを促すのはロイヤリティではなくディスロイヤリティ。平均的なサービス・インタラクションが顧客のロイヤリティを下げる可能性は、ロイヤリティを高める可能性の4倍ある。

良かれと思ってサービスしてきたことが、あまり効果がない、または逆効果になっているという分析結果。
自分自身が顧客の立場として考えれば、丁寧すぎる言葉遣い、いちいち確認のサイン、問い合わせ電話のたらい回し、パスワードやID管理の煩雑さ、マニュアルが長文でわかりにくい・・・カスタマーサービス(アフターサービス)あったとしても、面倒なことによく遭遇します。

邦題は「おもてなし幻想」というキャッチーなタイトルですが、原題は「THE EFFORTLESS EXPERIENCE(努力いらずの経験)」。顧客努力を減らしましょうと言っています。

顧客に「期待以上のサービスだったよ」と言わせるよりも「おかげで手間が掛からなかったよ」と言わせるべきだ。

顧客はサービスの良かった会社をほめるよりも、いやな経験をしたことを人に話したり、すぐSNSに書き込んだりします。下手なサービスをするより、顧客の抱えている問題をすぐ解決できるようにすることが大事

ということは、顧客に手間をかけずに解決してもらうには、カスタマーサービススタッフの資質が大きく影響するような気がします。そこで次のような提案もしています。

カスタマーサービスのスタッフに求められるのは、「コントロール指数(CQ)」というスキル。CQは、プレッシャーが厳しく複雑なサービス環境で判断をくだし、コントロールを維持する能力のこと。CQ自体はカスタマーサービスのスタッフは潜在的に持っているが、企業の方がマニュアルや規則で縛っているために発揮できない。企業はもっとサービススタッフを信頼して判断を任せることが必要だと言っています。

私の仕事関連でいえば、次のような点が、ウェブ制作やSNS運用担当の方にもヒントになるのではないでしょうか。

チャネル転換を減らすカギは、セルフサービス・エクスペリエンスを単純化すること。大部分のサービスサイトが失敗するのは、機能やコンテンツが不足しているからではなく多すぎるからだ。最も成功をおさめている企業は意欲的にウェブサイトを単純化し、顧客の抱える問題に最適のチャネルやコンテンツに積極的に顧客を導いている。

電話やメールのカスタマーサービス専門窓口がある会社だけでなく、どの業種においても、顧客サービスについてもう一度考えるきっかけになる本だと思います。